皆さんはウナギトラベルという旅行会社を知っているだろうか。自分の可愛いぬいぐるみを旅行に連れて行ってもらって、写真を撮ってもらうというサービスだ。多くの人は「何それ!」という感じだろうが、メディアアーティストの落合陽一氏はこれこそ新時代のビジネスのスタイルだと言っている。つまり、すごく狭い範囲での仕事だがオリジナリティにあふれ、ネットで世界を相手にすると成り立つという話しである。
私もそんなばかなことにお金を使う人がいるのかとHPを見てみると、次のような記載があった。「お客様は、ぬいぐるみです。体重は300グラムまでです。申し込み後郵送ください。ぬいぐるみ様に思い出に残る上質な思い出をウナギガイドがご案内し、ウナギカメラマンが写真に収めます。」しかもハワイやソウルなど海外へも出かけている写真が掲載されている。つまりぬいぐるみの旅行代理店だ。しかも申込時にそのぬいぐるみのアンケートをとり、車に酔いやすいぬいぐるみは車の窓際に置き、他の参加者が心配そうにのぞき込んでいる写真を撮ったり、食べ物アレルギーを尋ねたりしている。ここまでこだわることでサービスの価値が高まるらしい。つまり突っ込みどころ満載の写真で顧客同士のコミュニケーションを活発にしているのだ。またファンタジーとリアルを結びつけているのだ。
このファンタジーとリアルを結びつけるという意味では最近のAR(拡張現実)がある。実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することにより、目の前にある世界を仮想的に拡張するというものだ。最近の例としてはポケモンゴーだ。スマホを使ったサービスが多く出てきている。
これに対しVR(仮想現実)は仮想の現実を構築する技術だ。先日テレビでもテレワークの枠にVRの女の子が登場して、他の出演者とのやりとりをAIがやっていた。この世界は随分進歩していて、専用ゴーグルを付ければ、生身の人間がすぐ側にいる気分を味わえるなど、ビデオが登場したときのように普通に浸透していくのだろう。人間の相手は、配慮のない人間ではなくて、相手の気持ちを考えたAIに成るのかもしれない。そうすると、ますます生身の人間同士のコミュニケーションが難しくなる。アトムの世界はすぐそこまで来ている。SFの父といわれるフランス人シュール・ベルヌが「人間の想像できる事は、人間が必ず実現できる」といった事を思い出す。今、少しずつ時代は変わってきている。100年後はアトムの時代か、それともターミネーターの時代か、それとも・・・