コラム

人口問題


世界にはこの数10年で人口が急激に増えている国が多い。例えばインドネシアは40年前には約1億4千万人ほどだったが、2020年には2億7千万人とほぼ倍増しているし、フィリピンも同じく40年前は5千万人に満たなかったのに、2020年は1億を越して1億900万人になっている。現在世界一の人口を擁する中国も1960年には約6億6千万の人口だったが、2020年は14億4千万人に、インドは1960年には4億5千万人だったが、2020年には13億8千万人に増加している。

私はこれまでは、人口の急増国は子供を多く生むのだろうとしか考えていなかった。統計を見ると、女性一人が一生で出産する子供の平均数の上位はすべてアフリカの国である。1位はニジェールで6.82人、2位はソマリアで5.98人である。25位ぐらいまでアフリカの国が続く。アフリカの人口爆発は起こるべくして起こっている。一方インドネシアは91位の2.29人、フィリピンは76位の2.53人、中国は150位の1.7人、インドはなんと100位の2.20人(2019年グローバルノートの資料)である。出生率と人口の急増は当然に関係あるが他の大きな要因もあるようだ。

国際政治学者の高坂正堯(こうさか まさたか)氏がその著書でその理由を述べている。それは食糧と子供の死亡率の問題なのである。昔、子供は3~5割は大人になれなかった。そこで死ぬことを見越して多く子供を産んでいたのだ。そこに西洋文明が入ってきた。価値観や文化というものは簡単には受け入れられないが、医療というものは、誰でも死にたくないので、また死なせたくないので受け入れられた。その結果、子供を多く産む慣習は変わらないのに、死ぬ子供は急激に減少し、その結果人口爆発が起こったというのだ。

逆の場合で考えてみると、日本のように少子化という慣習ができてしまうと、それを変えるのは簡単ではないということにもなる。貧しい国では子供は働き手であり、親の保険でもある。その結果子供の数は増える。一方豊かな国では、子供は金のかかる存在となってしまい、子供の数は減る。子供を育てることが負担でない社会にしないと子供は増えない。日本は大学は金がかるし、中高でも無駄な出費が多い。しかし、幸福度世界一で、子供を育てることにもお金がかからないフィンランドを見ると出生率が近年急落している。1.87からわずか8-9年で1.41まで減っているのだ。個人主義でリベラルなため、子供を持つことより個人のことを優先した結果ともいわれている。人口問題は一筋縄ではいかない。

渕上コラム「変える言葉」