コラム

M&Aの仲介の必要性


2020年12月に当時の河野太郎規制改革・行革・国家公務員制度・沖縄北方担当大臣が、中小企業のM&Aについて、仲介は両社から手数料を取るので利益相反になるのではと発言し、話題になった。現在売り手と買い手の双方から手数料をもらうのは不動産業界では当たり前であるが、まだM&A業界では一般的ではない。

しかし私の経験と所属しているバトンズの実例では仲介をするとしないのでは成約率は5倍位違っている、その理由は明らかで、不動産などの時価がある程度公表されているものについては交渉するということが少ないのだが、会社の価値というものは、明確でない。さまざまな企業価値を算出する指標はあるが、それが通用するのはある程度の規模の中堅企業以上だろう。中小・零細企業に関しては、社長はそういう企業価値の話をしても理解できる人は少なく、とにかくこれでしか売らない。またこれでしか買わないというケースが多く、物別れになる。売り手、買い手それぞれのコンサルタントは、それぞれの雇い主の主張を無理とわかっていてもそう言わざるとえない。その結果物別れになる。

しかし、仲介だと、両者の話を聞きながら、落としどころを考えることができる。その結果成約に結び付く。私も基本的には仲介がやりやすいし、望ましいと考えている。問題
は、買主だ。買主の多くは、とにかく安く買いたいと考えている人が多いので、本人にとっては、余分なコンサルタント料は払いたくないと考える。その結果成約に結び付かない。買主は売りたい企業は困っているので売りたいのだろうと考える。そのため安く買いたたけると考えている人も多い。もちろんそういう企業もあるが、そうではない企業も多い。先月も業績は過去最高益を出している企業が、譲っても良いと考える社長に出会い、自分の年齢と顧客のことを考えて企業を譲渡したという例もある。基本は互いの信頼感だ。それがあれば折り合いはつけられると思う。

先日、中小企業のM&A支援機関の認定を受けたが、その支援機関ができた理由は、M&Aには資格がいらないため、誰でも参入ができるためトラブルが多発しているためだ。資格はいらないが、実はM&Aのコンサルタントには広範な知識が求められる。税務、会計、経営、法律、金融、環境、業界の知識などだ。その結果コンサルをするのは、会計事務所系、弁護士事務所系など特定の知識に長がある業種の参入が多いのが特徴だ。これからもまだまだいろんな動きがあるだろう。それこそ新しい業界の特徴だからだ。はっきりしているのは、日本経済にM&Aは絶対必要だということだ。

渕上コラム「変える言葉」