コラム

再現力について


その道の著名な講師のセミナーに参加すると「こういうふうにすればできるよ」という話しを聞く。そして会社に戻ってから同じ事をするが結果を出せない。こういう人が多い。再現性(再現力)というのは、他の人が実行して成功したシナリオを同じように実現できることを言い、その再現力こそが人の実力を測るバロメーターとも言われる。

有名な経営者も同じで、稲盛和夫氏はもともと京セラの創業者だったが、KDDI,そして日本航空の再建にも手腕を振るった。彼は経営者として再現力を持っているので業種が違っても、また再建という特殊な環境にも対応できるのだろう。

経営者に限らず一般の社員の中にも実力のある人は少なからずいる。彼らもまた再現力を持っている。冒頭に記した結果を出せない人々は、実は講師の話した内容を同じようにしているつもりなのだが、実は本質部分を理解できていないために結果を出せないでいるのだ。同じ話を聞いていても、そこから導き出される結論が異なる。これはどうすれば解決できるのだろうか。それはPDCAの実行しかない。

人は皆それぞれの経験・価値観・学んできたことなどにより物事のとらえ方が異なる。
違うことは悪いことではない。すごく細かい違いがパワーを生む時代だ。問題はそれを生かせないことだ。例えば、「こういうセミナーを開催すると客はくる。」と講師がいう。聞いた人は帰ってから講師のいったとおりにセミナー開催のパンフを作成し、配布する。本人は講師が言ったとおりにしているつもりだ。ここで考えなければいけないのは、講師のいった話の本質への理解だ。そしてその本質を理解した上で自分の住む地域に当てはめていくことだ。ピカピカの靴で背広でびしっと決めて営業しなければいけない土地柄と、そうすると逆に警戒される土地柄があるとする。講師の話を自分の対象の顧客に当てはめて作り直さなければいけないのに、いやこうしろと言ったと主張してピカピカの靴とスーツでは警戒されるのに行ってうまくいかないということもある。

ここで料理のケースを考えて欲しい。まず万人に受ける料理というものは存在しない。どんなにおいしい三つ星のシェフが作る料理も、ベジタりアンは肉料理も魚料理は食べない。ムスリムなら豚が少しでも入っている料理は食べない。和食の刺身も少し前までは生魚は食べない世界の慣習の中では敬遠されていた。それが世界で食べられるようになったのは、世界が近くなり、多くのカルチャーに接することができるようになったからだ。目の前のことも実は日々変化している。本質を見ないと何も出来ない。

渕上コラム「変える言葉」