コラム

通説のエビデンス


人は生まれてから大人になるまで、いろんなことを親や先生から教わる。社会に出た後も上司や取引先、そしてセミナーや本から教わることも多い。しかし、私はいつも思っていた。その話は本当なのだろうか。私に話した人は自分の経験を話したのだろうか、それとも人づてに聞いた話をしたのだろうか。それともたぶんこうだろうと自分の推測だったのだろうか、と。

そう思った後できるだけ実際に試してみようと思い立った。それから数十年常識や定説はできるだけ試してみるようにしてきた。最近思うのは、親と子の間、夫婦の間、つまり家族関係は私が若い頃の通説はほぼ当たらないと思う。なぜなら家族形態が変化しているので、昔の常識はあたらないことが増えているのだ。

私も世間の人と同じ親との関係で悩んだ時期があった。その時周りから言われたのが、「もう少し、がまんしよう。齢を取ると丸くなるから」だ。しかし、そうならなかったし、そうならない理由もわかる。日本の平均寿命は、戦後しばらく50歳代だったのだ。これ位の寿命なら本当に少し我慢すると親が亡くなって終了したかもしれないが、2019年は男81歳、女87歳である。いくらがまんしてもそう簡単には亡くならない。

同じように会社の経営の仕方も変わってきた。一昔前のやり方は、今ではほぼパワハラとセクハラになる。政府は働き方改革といって、企業に負担を課す。今でも3分の2の中小企業が赤字なのにどうせよというのか。確かに、政府の言っていることにも一理はある。日本に来る海外旅行者の旅行日数にびっくりするように、明らかに先進国の中で日本は労務面が立ち遅れている。しかし、いまのままやっても多くの中小企業は生き残れない可能性が高い。人手不足による人件費の高騰、最低賃金の大幅アップ、社会保険料率と加入者増によるアップ、どう対応すればよいのか。

これからの経営者は、簡単ではないが、新しい通説を作らなくてはならないのだろう。新しい時代には、新しい考え方が必要だ。考えると当たり前のことだが、これほど難しいことはない。しかし、やらなければならない。

渕上コラム「変える言葉」