今日の合同新聞の朝刊に「経団連が脱終身・年功に本腰」という記事が載っていた。しかし、終身雇用・年功序列というものは制度ではなく、日本的な風土だ。なぜなら就業規則にはどこにも終身雇用とか年功序列という記載はない。考えてみれば、「会社の寿命は30年」とも言われているし(実際半数の企業はそれまでになくなっている)、まず入社して定年で退職するまで40年以上あるとすると、まず終身雇用と言っても会社がなくなってしまう。終身雇用という言葉だけが一人歩きしている感もある。
年功序列というのも、日本の企業は社員を評価するのが苦手だし、高度成長の時代は、従業員も皆給料があがるので、評価しなくてもすむ年功序列というイメージをとっていたにすぎない。それで社員は特に不満は持たなかった。しかし、時代が変わっても企業は新しい制度に取り組むのが苦手なのか、形だけがそのまま放置されている。実際は収入の増えない中小企業では給料も上がらないし、賞与が支給されないケースも多い。すべては業績次第なのだ。働く人の多くが望むと思われていた終身雇用・年功序列という旗を上げないといけなかっただけだ。これからはどうだろう。
メルカリの代表者山田進太郎氏の話しをテレビで聞いた。一番びっくりしたのは仕事に人を当てはめることはしたことがなく、しないといけない仕事をしたい人にまかせているだけだという発言だ。日本企業は基本的にいろんな仕事をさせることで能力を上げる職能給だが、山田氏のやりかたは人と仕事をマッチングさせるアメリカで採用されている職務給に近いと感じた。そしてその人材のすごさにまたびっくりした。しかも皆若い。
村上龍氏の後記で「彼は新しい経営者だ。会社も新しいスタイルの会社だ。働いている社員ともフラットな関係で、上も下もない。顧客でさえ普通の顧客と言うより同志のような関係だ」と述べている。これまでの日本企業は、新しい業務をすべて自前でまかなおうとする。
新しい業務にそれをやりたい人で、かつそれをやる能力がある人を集めて当てる。すごく難しいことだが、メルカリは人材のブラックホール(優秀な人材をどんどん吸収していく)と言われていて、それが可能になっている。そこには山田氏の経営理念や働き方に対する新しい考えがあると思われる。経営理念が未来を左右することは間違いないが、業績を上げていかないと理念の実現、従業員の待遇アップはできない。