コラム

理想の会社Ⅱ


理想の会社についてもう少し述べよう。政府はいつも画一的な見方をしがちで、以前は日本の企業の代表である製造業を標準としていろんな政策を決めていた。しかし最近では一つ気になることがある。それは今の日本人は若者から老人まで考えも好みも全く違うということだ。同じ若者でもとにかく頑張って給料を上げたいという若者から、給料は少し安くても自由時間が多い方がよいという若者、高額な収入を得ている若者から、年収200万以下の若者まで様々だ。

老人も歳をとっても同じように働きたいという人から、孫の世話をしたい、庭いじりをしたい、旅行をしたいなど様々だ。死ぬまで働く人から、定年後長い老後を過ごす人までおり、家族関係も一人暮らし、孫達と一緒とバラエテイにあふれている。これだけ生活が多様化している時代に、働く人の受け皿としての企業はどのような多様性を持たせることができるのだろうか。逆に言うとこれからの理想の会社とは、個人の多様な生き方を受け入れる会社で、理想の社会とは企業の様々な就労スタイルを認める社会であるとも言える。

これからの企業は、まず経営理念を明確にすることが重要だ。もちろん経営理念は目指すもので、現状はまだブラック企業という事もあるだろうが、そこはSNSの発達した時代、すぐわかるだろう。大事な事はこういう会社にしたい、その実現に協力して欲しいということだ。「給料が高くて、仕事が楽な会社が理想」というような小学生のような意見はある意味気持ちはわかるが、そんなことはできないことは大人なら皆分かっている。これからの若者は、意外と大変でも企業の理念に共鳴して働きたいという人も増えているような気がする。

経営理念を考えることは大変むつかしいことではある。しかし、お金を稼ぐ以外に社会的な役割、かかわり方を考えるのが経営理念である。食べるために働くというポジションはどの時代にも多い。しかし、私たちは仕事を通じて社会に役立てるということが明確な時代に生きている。食うや食わずの時代ではない。今の時代の貧乏は昔の本当の貧乏ではない。生活保護制度も整っている。しかし、今の高齢者は自分たちが生きた終戦後の本当に大変な何もない時代の考えをそのままどこかに持っており、教育者は戦時中の厳しい教育体制をそのまま引きずっている。本当に時代は変わっていっているが、変化を嫌がる高齢者が亡くなるまで待っていては、今の若者の幸福感は得られない。幸福度ランキング58位(2019年)という実態が今の状況のすべてである。

渕上コラム「変える言葉」