コラム

ワンピース


ワン・ピースのコミックが100巻を迎えた。現在100巻以上のコミックは17作品で、最も多いのはゴルゴ13の202巻らしい。私は高齢者だが今でも一部の漫画は読んでいる。ただ若い時のようにすべてに目を通すことはせず、気になるものだけ目を通している。その中でも楽しみで読んでいるのはワン・ピースとビッグコミックだ。

大学在学中に、駅で電車を待っているときに知らないおじさんが「漫画なんて読むな、もっと難しい本を読め」と言って通り過ぎたことを今でも思い出す。その前まで難しい本を読んでいたので、休憩で漫画を読んでいただけだったのだが。おじさんの言いたいことはわかるが、少し自己中心だ。こちらの都合はわからないからだ。あのおじさんは研究者が酒を旅行先で読んでいたら、旅行などせずに(仮にハネムーンでも)寝食を忘れて研究しろというのだろうか。集中力の持続を考慮しないすごく非効率さを推進しているとは考えないのだろうか。

いつの時代もそうだが、その時代を生きている人は、次の時代のことがわからない。林修先生が若い人へのアドバイスで「親の言うことを聞くな」ということを言っていた。つまり親には子の時代のことは理解できないからだ。例えばユー・チューバー、今の人気職業で、かなりの金額を稼ぐらしいが、子がユーチューバーになりたいと言えば、ほとんどの親は反対し、公務員や銀行員になると言えば、ほとんどの親が賛成する。しかし、今や官僚はブラック企業の代表だし、銀行員はどんどんリストラされている。逆に漫画家の名声は世界に知れ渡っているし、コミックやアニメは日本の強いソフトとして世界に知れ渡っている。私のフランス在住の孫も漫画のファンだし、大学卒業後の志望がパイロットからアニメデザイナーへ変わってしまった。

つまり過去を生きてきた親や先生の考え方と、未来を生きる若い人の考え方に齟齬があるのは当たり前だということだ。特に現代のように社会が急激に変化するときはなおさらだ。これに親は特に注意しないといけない。相続の時によくあることが、昔の親の相続はほぼ長男への相続だった。そして次の代になって相続が起こると、上を見ていた長男は俺がすべて相続して他の兄弟の面倒をみると主張するが、それはちがうと他の兄弟から否定されて分割が行われる。しかし、まだ均等とまではいかないことも多いが、次の世代ではほぼ均等に行われるようになると考えられる。時代は確実に変化していく。その中で100巻を超えるコミックというものは、必ず時代を映している。それがないと続かない。その理由を考えるのも楽しい。

渕上コラム「変える言葉」