コラム

妻のトリセツ


黒川伊保子さんの「妻のトリセツ」が売れている。人工知能研究者であり脳科学コメンテイターでもある彼女の話には説得力がある。

戦略の第一歩は相手のことを知ることだが、妻についてまず知って、その後取り扱いについて戦略を立てようということだ。女性脳は「共感脳」であり、男性脳は「問題解決脳」であるといっている。

人類は600万年という長い歴史を持っている。そのほとんどが狩猟文明である。農耕が始まったのが約1万年前、それまではいつも飢えとの戦いだった。それがDNAに刻まれていて、たかだか1万年前に始まった農耕文明の成果である米や小麦に代表される炭水化物の多い食事に対応ができず、肥満や病気が発生しているという説もある。

女性は子供を産み育てるため、体験記憶に感情の見出しを付けて収納しており、一つの出来事を引き金にして、その見出しをフックに何十年もの類似記憶を一気に展開する能力を持つ。この能力は女性の標準装備らしい。
その理由は 人類は一個体が残せる子供の数が少ないため、子育ては常に新しい問題に直面する。そこで臨機応変にそれまで経験したすべての記憶を呼び出して対応する必要があるというのだ。それこそが女性に与えられた特権なのだ。その一見ネガティブな引き金をポジティブなものに変えるにはどうすればよいのだろうか?

脳科学から見た最良のテクニックが「記念日」らしい。記念日により女性は過去の幸せな記憶を呼び戻せるのだ。その場合もサプライズでなく、事前に予告しておくと、プロセス志向型の女性はその日までいい思い出を紡ぐらしい。1日で一ケ月楽しめるのだ。

物事はその背景にある事実を確認すると認識が大きく変わることが多い。あれが悪いこれが悪いと文句を言うのではなく、その原因を理解し、対応していく。仕事における嫌な顧客も、厳しい上司も言い訳ばかりする部下もすべて相手の理解からスタートするのである。これこそがダイバーシティ(多様性)の時代の対応なのである。

渕上コラム「変える言葉」