コラム

ポツンと一軒家


「ポツンと一軒家」という番組が人気だ。特に中高年に人気が高い。一人を楽しむという考えもあるが、最近は本人ではなく周りの人が一人でいると可哀想だの、孤独でいることはよくないと考える傾向がある。本人の考えによるアプローチではなく、周囲の人の考えるアプローチである。特に老人を一人の大人でなく社会的弱者と考え、無理に施設に連れ出そうとして、それが良いことだと放送している番組もある。連れ出される老人は、周りの人が一生懸命なので合わせてくれている感じもしないではない。老人の難しさは人によって全く違うと言うことである。同じ事をしても人によって良い悪いと逆の結果が出る場合がある。又、世の中もまだ老人社会の経験が足りないと言うこともある。海外では、ソローの森の生活など一人で森の中で暮らすことの素晴らしさを書いた本も多い。

「ポツンと一軒家」は、山の中に一人、又は夫婦・親子で住んでいる人を訪ねていく番組だが、そこでは誰も他の家とすごく離れているのに、一人で住んでいて寂しいとか、嫌だとかは言わない。都会の煩わしさを離れて逆に皆それなりに幸せそうだ。本人の選択による人生を送っているのだ。森の中にいることも、周りに誰もいないことも、それらはマイナス要因ではないことを自ら証明しているのである。

現代社会は、SNSですぐ意見が言えることも影響しているだろうが、ある意味おせっかい社会である。間違ったお節介も多い.間違った情報を信じて違う人を罵倒する例もよく聞く。SNSが使えず、非効率で不便なところでも人は楽しく生きることができるのだ。世界には電気・ガス・水道が今でもないところも多い。しかし、住んでいる人は明るく親切だ。もちろんそういう生活に戻れないだろうが、それゆえ都会に住んでいる私たちは、水は沢の水を使い、ガスは薪を使い、電気は「ポツンと一軒家」に住んでいる人のそれぞれの人生に魅力を感じるのだ.

考えて見ると「ポツンと一軒家」は近くの集落の人は知っているが、干渉は少ない。周りを気にしないで生活できる。落としどころが丁度良いので魅力を感じるのかもしれない。ただ問題点はある。それは効率という観点から見た問題だ。つまりその維持に市町村の負担がかかるという点だ。その「ポツンと一軒家」のために道路の維持など経費がかかるのだ。アメリカでは、住む都市と遊ぶ近郊の自然のエリアは明確に分けられている。街もコンパクトシティといい歩きやすい街作りをしている。個人の選択と税の使い道をどうすればいいのか課題は多い。

渕上コラム「変える言葉」