コラム

旅について


無性に旅に出たくなるときがある。「旅行」ではない。「旅」である。旅行の目的はリフレッシュだ。今のいわゆるツアーである。これに対し、旅の目的は成長である。今の自分からもう一つ上に上がりたい時に旅をする。アドベンチャーでチャレンジングである。

こういう視点から日本で旅をした著名人というと、まず松尾芭蕉が思い浮かぶ。平均寿命が30代という江戸時代に46歳の芭蕉は深川から東北の松島、平泉(この時読んだ句が「夏草や兵どもが夢の跡」という句だ。)を通り、新潟県の象潟まで足を伸ばし、金沢を経由して岐阜の大垣まで5ヶ月超の旅を弟子の曽良と二人でしている。その時書いた紀行文が「月日は百代の過客にして、行きかう年もまた旅人なり」で有名な紀行文奥の細道だ。まさしく新たな境地を開拓している.この旅が芭蕉の名声を確立した。

もう一人思い浮かぶのが、同じ俳人である種田山頭火だ。「分け入っても分け入っても青い山」など全国行脚の時に詠んだ句も多い。俳人は旅という環境に置かれると良い句を詠むようだ。彼も45歳から旅にでているが彼の旅は自分を見つける旅であったと思われる。彼も芭蕉と同じくこの旅を通じて自分の作風を確立している。

経営者も旅を通じて新しいやり方を見つける人も多い。旅の非日常性がそうさせるのであろう。そういえば最近定年を迎えた夫婦が学生時代に行った場所や、行きたかったけど行けなかった場所に出かけている話しを良く聞く。そういう団体でない旅は良い旅になる確立が高いような気がする。

旅には目的のある旅と目的のない旅がある。目的のある旅としては、湯布院の玉の湯、亀の井別荘の溝口薫平と中谷健太郎氏が中心となり50日間の欧州旅行へ出かけた。それが湯布院を日本一の観光地へしたのである。

海外に旅行すると外国人が家族で友人で一緒に長期旅行をしているのに出会う。テレビでも「YOUは何しに日本へ」という番組で訪日している外国人の休暇の長さにびっくりする。日本もいつになったら旅先進国になれるのだろう。特に未来を造る若い世代が仕事に追われて旅にでないことには不安を覚える。旅は遊びではない.旅は人生を振り返り、人生に価値を付加するものと考えるがどうだろうか?

渕上コラム「変える言葉」