会社経営へのアプローチには二つのスタイルがある。一つは現実からのアプローチ、もう一つは社長の目指す理想から入るアプローチだ。
現実からのアプローチは波風は立ちにくく、社員にも受け入れられやすいが、新しい価値を社会に提供するということはない。そのため時代が変わっていく中で、若い社員や女性に受け入れられ、社会を幸福にしていくという価値は作りにくい。一方理想の会社から入るアプローチは、うまく経営できれば、社会に大きな価値をもたらし、人の採用に困らなくなるというメリットがあるが、社員がそれを当たり前と考えてしまうと会社の業績は上がらないというデメリットがある。
最近新聞で病気でも休めない、大雪が降っても休めない人が多いという記事を見た。考えてみればこれは変な話しだ。この国では働いている人は皆病気もせず、介護や子育てが必要な家庭でも、そういう問題は特殊で考慮するにあたらないと考えているのだろうか。つまり、人間に関して発生するリスクに対して何も考えていないことになる。
しかし、人の命に関わる産業、例えば航空機産業で、パイロットが病気になったら飛行機は飛ばないのだろうか。新幹線の運転手が親の葬式に出たら運休になるのだろうか。それはあり得ない。なぜなら当然にそういうことが起こる前提で労務管理をしているからだ。人の命に関わらないとしても、社会の中のすべての仕事は有用な役割を果たしている。そこに違いはない。ここに大きな発想の転換が必要なのは間違いないと思われるし、またそこに日本社会の進歩の種があるような気がする。
弊社では、大雪が降りそうなときや病気のときには無理して出社するなというのが決まりだ。大雪の中出社しても、出社途中で事故に遭うリスクが高くなるだけだし、病気なのに出社しても逆にリスクを増加させてしまうだけだ。感染症なら他の社員にうつすかもしれないし、本人の病気がひどくなり長期欠勤となるかもしれない。これは事務職だからという特性はあるが、どの業界でもやり方次第だと思う。その時に問題になるのは施設内店舗などの施設側との契約だ。最近ではコンピニがオーナーと営業時間や休みを巡って争っていたが、コンビニの気持ちも分かるが、そもそも当初の契約に書いてあるからといっても、実際に運営を数十年もやっているとオーナーも歳は取るし、雇用状況も変わる。そこをみずに契約一点張りでは共感は得られないと思う。オーナーは零細企業なのだ。すべては時代で変わる。