コラム

大局観


時代が大きく動いていくときには大局観が欠かせない。新しい時代の経営戦略は常に未知との闘いである。従って、将棋や碁のように現在の局面(部分)から将来(全体)を推測して方針を決定せざるを得ない。その時の重要なキーはテクノロジーの問題だ。

アメリカにイーロン・マスク氏の作ったテスラという自動車メーカーがある。創業から13年でアメリカ最大のGMを抜き全米トップに立ち、2020年の1月時点でトヨタに次ぐ世界第二位の時価総額に躍り出た。多くの人のテスラのイメージは環境に優しい電気自動車を提供している会社ということだろうが、テスラが並み居る他の自動車会社の中で突出しているのはその経営戦略の独自性にある。一つは車にソフトウエアーを登載している。スマホのアプリに似たもので、旧型のモデルでも常に最新のシステムを使えるようになっている。もう一つはビッグデータの集積である。

テスラの戦略は、エクスペリエンス戦略という。マーケットインでもプロダクトアウトでもない、その二つをうまくつなぐ思考法で、ユーザーが得られる体験や感動を想像しながら製品やサービスの開発にあたるということだ。実はスターバックス、アップルなども同じ思考法で戦略を作っている。つまり感動が顧客を呼ぶのだ。

今、IT・AI・フィンテック・ブロックチェーンなどの新しいテクノロジーの進化により、あらゆる業界で人の価値の低減が起こっている。ロボット化などで製造業の革新は先行して進んだが、これからは事務職、銀行員など多くの職種にも及ぶと予想されている。しかし、現実は常に予想を上回る形で進行する。最近は営業職の人が新しいテクノロジーに仕事を奪われている。2001年から2018年の間に約100万人の営業マンが仕事を失っている。常にテクノロジーが現実のハードルを越えていっているのだ。

身近で思い出すのはネットで靴や服を購入するというZOZOTOWNが出来たときである。靴は履かないと分からないだろう。服は着ないとわからないだろうと思っていたが、あっという間に若者を中心に受入れられて行き、前沢社長は月に行くことが出来るようになった。同じようにこれからも私たちの想定を超えて新しいテクノロジーを駆使した事業が立ち上がっていくのだろう。それらが使えない人はどうすればよいのか。誰も安閑としてはいられない。テクノロジーに文句を言っているのは、自分自身の能力欠如に対する

渕上コラム「変える言葉」