コラム

ジャパンハート


世の中には素晴らしい人が必ずいる。カンブリア宮殿でそういう人を見つけた。ジャパンハートの代表の小児外科医の吉岡秀人氏だ。アジアの貧困地帯での医療を無料で実施してきた医師で、地元の大分大学の出身者だ。一緒に参加する医師や看護師などのスタッフも自分で旅費・宿泊費など経費を支払い、しかも無給である。それなのに希望者が後を絶たない。

彼の言葉には医者という命と向き合うからなのか本質をつく言葉が多い。お金についてはこう言っていた。「お金は山を登るときの靴だ。良い靴を履かないと、足は痛い。そろりそろりと歩かなければいけない。しかし、良い靴を履くと一気に山を駆け上がれる。お金があると目指すところへ一気に登っていける」彼の目には常に山頂(目標)が見えているのだろう。

又、こういう言葉も印象に残っている。「皆がなぜ幸せになれなったか?それはいつも与えてもらってばかりだからだ。自分が人に与えられるようになれば幸せになれる。」けだし名言である。世の中には自分が人に何を与えているかは考えずに、とにかく欲しがる人が多い。そういう人には、相手にもっと自分のためにして欲しいという他力本願が見え隠れする。

人に与えられる人は幸せだ。子供を持った母親、社会福祉を実践する人、寄付をする人、アイドルの支援をする人などたくさんいる。特に私の心に今も残っているのは、障がい者が生まれてきたあるお母さんだ。友人ではあるが、他人の私は障がいを持った子が生まれて大変だなと思っていた。しかし、その子を抱きお母さんが「本当にこの子可愛いんですよ。生まれてきてくれて良かった」と話されたとき、頭の中からそれまでの障がい者に対する偏見(そうは思っていなかったが)が吹き飛んだ。それ以来、そのお母さんは自分の子だけでなく、同じような境遇の多くのお母さんと一緒に子供達のために奮闘している。たいへんと思うだろうが、本人は幸せだ。

つまり他人に何も与えない、与えられるだけの人生を望む人は、不幸せな人生を希望していることと同じなのだ。顔を見てみるとわかる。皆さんの周りでどういう人が幸せな顔をして、どういう人が不幸せな顔をしているだろう。不幸せな人は結局自分で自分の人生をそうしているのだ。そういえば塩野七生さんがこう言っていた「人生では、まず山に登ることが大事だ。どのやまに登るかは関係ない。まず登ること」

つまり人に与える人は、山に登ることになる。より困難な状況を経験することになる。それは避けることが出来ない。なぜなら、新しい状況を選ぶからだ。これに対し与えない人は、山に登らない。

渕上コラム「変える言葉」