コラム

わいた温泉郷


今回は先週紹介できていなかった熊本県の小国町にあるわいた温泉郷について話す。実は私はここに40年程前から時々遊びに行っていた。近いので日帰りばかりであるが、涌蓋山(わいたさん)のふもとに、はげの湯、たけの湯、山川温泉、麻生釣温泉など六つの個性豊かな温泉が散在している。里山ののどかな雰囲気の中、いろんなところから蒸気が噴き出している光景はなかなかユニークである。この自噴する蒸気を使った蒸し料理も有名で、食材を持っていって自分で蒸すことも出来る。はっきりいってすごい山の中であり、温泉も点在しているので昔はぱっとしなかった。しかし全国の温泉地・観光地と同じように、施設、道路、温泉地全体の整備により、今はなかなかユニークな温泉地となっている。

ここの特徴は、湯布院や黒川と違い、特定の宿泊施設のリーダーシップによって知名度が上がったと言うよりも、本当に大自然の中にそれぞれの温泉地、施設が自由に展開していっていたが、核となる施設の登場により、一気に知名度が上がったようだ。とにかく各温泉地の癖が強い。

わいた温泉郷は、「豊礼の湯」という大きな駐車場がある温泉場が中心だ。お湯はホワイトブルーで蒸場もある。山翠という旅館は山の中なのに伊勢エビ料理が有名だ。当然に名物の蒸し鶏料理はある。しらはなシンフォニーという宿はおばあさんが作る絶品の山菜料理が有名だ。何を食べてもおいしいし、広い硫黄温泉も貸し切りだ。

変わったところでは、守護神温泉という宿は、全室が一戸建てで、温泉付しかも入る度に新しく温泉を入れかえるというスタイルで、その温泉からは絶景の谷と山が見える。しかも大きなテレビやワインやお茶のサービスもあり、カップルや家族でゆっくりするには最高だ。食事は一切ついていないが、電話で注文すれば宿まで配達してくれる。麻生釣温泉も露天風呂付で、食事はつけてもつけなくてもどちらでも出来る。つまりわいた温泉郷はその異なった個性により宿泊者の多様性への対応ができるのだ。

日本は、先進国の中でずば抜けて森林割合が高い。約68%が森林だ。大都市からも1~2時間車走れば森の中を歩ける。これに対しアメリカは森林割合は34%しかない。日本の人気の温泉地は自然の中にあり、車の便が良いという特徴がある。日本人は有史以来森に囲まれて暮らしてきており、そのDNAのせいか自然の中に行くと安らぐのだ。次の休日は是非森の中の温泉地へ出かけよう。

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