コラム

そうだ、旅に出よう


Go to travelの影響か、コロナ疲れの影響か、人が観光地に戻りつつある。しかし慎重な日本人らしく、まずは近場からと言う感じで、遠距離の旅行に使う航空機はまだ空いているような状況だ。

人生を豊かにするためには、昔から「人、本、旅」が必要だと言われている。人生を豊かにするには、「本を持って、旅に出て、人と会う」ということが重要だということだ。今は「旅」だ。江戸時代には、当時の人口の6分の1に当る400万人が1ヶ月以上かけてお伊勢参りに出かけていた。しかし、現在はそんな日数旅行するということはとても考えられない。それは戦後の製造業をモデルとした休むことは悪であるという価値観を平成、令和と時代が変わってきても維持し続けているからである。

1年間は8760時間である。このうち、仕事は240日(弊社の場合)×8時間で、1920時間である。つまり約22%が仕事の時間というわけだ。残業が多少あるとしても、30%に満たない。この30%未満の仕事をする会社が人生のすべてを支配している事になる。人生の時間の多くを共有する配偶者よりも仕事が優先するというのは合理的な思考ではない。私が若いときにTVで、仕事をしている夫に、妻からとにかくすぐ帰ってきてという電話をさせる。仕事を一生懸命やるアメリカ人でも、外国人は皆すぐ仕事を辞めて帰っていた。それに対し、日本人は仕事をできるだけ早く終わらせてから帰ると言い、帰らない。それをまじめな日本人と褒めていた。

また海外旅行に行くと、外国人の旅行者は、若いカップル、職場の友人など働き盛りの人が多く旅行しているのに対し、日本人は高齢者のカップルやグループ、それに若いカップルが中心で、働き盛りで一番海外に行って社会を変えないといけない人が見当たらない。そのため日本の政策は進歩があまりない。働き盛りの人に「人、本、旅」という人生を豊かにするパーツが欠けているからだ。

今のgo to travelはコロナが原因とはいえ、日本人に人生を豊かにする旅を政府が初めて提供している。日本の世界における経済の地位は下がる一方だ。その一因として社員が社内の飲み会をたびたび強要されることにより、いろんな人に会う「人」の縁をカットされている。多くの残業を強いれば、「本」を読む時間を作れない。有給休暇のまとまった取得ができなければ、ちまちました旅しか出来ない「旅」のカットとなる。これでは未来がない。

渕上コラム「変える言葉」