コラム

確定申告


3月に入り,個人の確定申告で多くの税理士事務所は忙しい。しかしその内容はかなり様変わりしている。私が税理士事務所へ入所した時,まず驚いたのが,3月の多忙期の働き方だ。全員毎日午前様は当たり前,新入社員の女性も同様であった。不思議なことに皆で毎日遅くまで働いていると変な充実感があったのは事実だ。さらに打ち上げを最後の日にしていたのだが、仕事が遅れて途中から参加する社員に、皆がお疲れ様と拍手していたが,私個人は拍手されるべきは早く仕事を仕上げて先にここに座っている人で,遅くなった人は顧客にも迷惑をかけている人だと思い,変な慣行だと感じていたことを思い出す。しかし、確定申告時の異常な(働いている社員はそう思っていなかったらしいが)労働状況の影響で私の視力も数年で1.5から0.07まで低下した。それ以来メガネの世話になっている。

その後、この確定申告の状況を変えたいとチャレンジを試みた。まず実際の状況を確認した。すると、忙しいと言いながら1月、2月はあまり残業もせず確定申告の準備もしていないことが分かった。そこで1月になるとすぐに準備をすることにした。申告は2月16日からだが、資料をもらうのは別にいつでも良いからだ。そして申告書を作り,提出だけは期限が来てからすれば良いのだ。「一番最初に提出します」という文言は顧客にもアピールした。

次にシステムの課題だ。今でこそ随分と使いやすいソフトが出来ているが,当時はそうでもなかったので、いかに使いやすいソフトやシステムを導入するかという検討を東京に何度も足を運び行った。そして新しいシステムの導入となった。

さらに昔は担当者に一人の若い女性が補助でついていた。古参の社員の着手が遅いせいで一緒に3月になると連日午前様に付き合わされていたのだ。そこで補助は定時に帰るパートさんにして、特定の担当者に帰属しないようにした。これまでのやり方でやると担当者が大変なので、皆少し早く準備することになる。その後午前様が当たり前の職場が、誰も午前様になることはなくなった。遅くても午後10時までには帰る職場が誕生する。つまり、ある課題を解決するには、一つは本人の意識・考え方を変えること。二つ目にはそれを後押しする仕組みが必要で,この2つがないとうまくいかない。根性だ。やる気だと上から言うだけだけではなく,経営者は全体の仕組みの改善を常に心がけていく必要があるのだ。仕組み作りと課題克服へのモチベーションアップこの2つがないと改善はうまくいかない。

渕上コラム「変える言葉」