コラム

変わる働く人の価値観


中小企業の多くは、社長が自ら就業規則を作成しない。常時10人以上の労働者を使用する場合は必要になるが、それ以下の規模の会社で作成することは少ない。また作成義務がある中小企業も市販のモデル案をそのまま使い、必要なところだけ少し変えて使用するケースが多い。しかし、それでは令和の時代に人は採用できないと考えたほうが良い。

2020年は、生産年齢人口(15歳~65歳)が前年比61万人減少している。これからもさらに減少していくと予測される。この減少を補うのが、高齢者の定年後の雇用と、女性のさらなる社会進出である。さらに少子化による子供の数の激減による親の過干渉の問題がある。今の親たちは安定志向を子供に要求し公務員と大企業への就職を押し付ける。そして大人になった子供たちはこの親の要求を聞き入れるのだ。これからの中小企業は腹をくくって対応しないと優秀な人は誰も来なくなってしまう。

中小企業が高額の給料と素敵な福利を提供できるならともかく、それ以外で無料で採用に効果をあげられるのは、社員と社会に受け入れられる経営理念と、それを反映した就業規則、人事考課を作成することしかない。もとろん本気でその就業規則を守ることが前提だ。APUの出口治明学長が、日本の長時間労働による忠誠心を重視する大企業に勤めると、「フロ、メシ、ネル」しか言わなくなるという。これを社員に時間を自由に使えることにより、「人、旅、本」の人生に変えないと社員の成長と満足は少ないと言っている。中小企業も定年の廃止、女性の登用、残業の基本的廃止、有給の100%消化など働く従業員にとっても有用な会社になることはできる。それが結果として新しい人が採用できる企業になることだと考える。

今からの若い人は優秀な人ほど、給料だけでは会社を選ばない。いつも上司が部下をどなっている企業など誰も働きたくない。いつも思うのだが、子供の病気や用事、親の病気や用事など人間にとって生きていくうえで当たり前のことを社員は申し訳なさそうに申請してくる。私はどうどうと休めばよいと思う。しかし、仕事もどうどうと役割をはたすことが必要だ。フランスに住んでいる娘に話を聞くたびに、日本はいつからこんな遅れた国になったのかと思う。だから先進国で唯一給与が下がり、男女の平等もない。幸福度は最低、昔の価値観を持つ老人が幅を利かせている。高齢者のなかにも当然に優れた人はたくさんいる。でも彼らは波風立てる発言はせず、黙っている。新しい価値観を広めていき、日本を片隅から良くすることに尽力しなくてはならない。

渕上コラム「変える言葉」