コラム

会社の寿命は30年


会社の寿命は30年と言われ、同タイトルの本も結構売れた。35歳から40歳くらいで会社を起業した経営者の年齢は起業後30年経つと65歳から70歳程度になる。例えば、サラリーマンとして働いている人が、仕事をする中で自分ならもっと良いサービスを提供できると考えて起業したとする。そしてその考えは正しく事業は軌道に乗り、経営者となった人は事業に全力を尽くす。しかし、社会の変化は激しく、新しい考えを持った別の起業者や、時代に合わせて戦略を変えてきた他の企業に追われる立場になる。しかしそれまで彼は事業の運営に忙しく、未来のための研修や、新たな構想やそのための人員の手配をしてこなかった。その結果どうなるかは推測できるだろう。つまりどんなに優れた事業のやり方も、常に変えていくことなしには時代により陳腐化することは避けられないのだ。

特に今のように新しい技術やスキルがどんどん出てくる、また女性や若い消費者の感性が大きく変わっていく時代には、消費者の行動が短期間で大きく変わる。それに対応しないといけないが、日本の中小企業の経営者の多くは、その労働時間の多くをいつまでもプレイヤーとして、つまり優秀な社員として働くことに使っている。マネージャーとして、新しい時代に合わせた事業計画や企業理念の作成に時間を使わない。
日本の経営者は社員の1.5倍から2倍働いているかもしれないが、給与はそれに見合っていない。もしくは安い報酬をもらって経営者として働いているならば、それはその給料に見合った仕事しかしていないことの証明である。

規模にもよるが、経営者はできるだけ多くマネージャーとしての仕事をしないといけない。ここで難しいのは働いている社員にとってはマネージャーの仕事は理解できないということだ。自分たちの理解できる仕事をして、かつ一番働いていてほしいという考えが社員に散見される。経営者に社員と同じレベルの仕事を要求するということになると、そういう企業は生産性の低い企業になる。日本が他の先進国と比較して常に生産性が最も低いのは、こういう思考により、経営者が本来の経営者の仕事をしていないのが一因なのかもしれない。

どんな会社の経営者も幹部社員も時間とともに陳腐化していく。それを食い止めるためには、経営者と幹部がもう本当の経営者・幹部としての時間配分を増やすしかない。それとも十年一日という言葉のように同じ状態がずっと続き進歩や発展がないことを目標にするのか。考えよ。

渕上コラム「変える言葉」