コラム

戦争を知らない子供たち


私が学生の頃「戦争を知らない子供たち」というフォークルセダーズというグループの歌が流行った。「戦争が終わって僕らは生まれた。戦争を知らずに僕らは育った」という歌詞だったが、日本が二度の大戦を経た後、一度も内戦も海外との戦いも経験せずに今に至っているのは当たり前のことではない。これは大変なことなのだ。他の国で考えてみよう。韓国は朝鮮戦争を経験しているし、実はまだ休戦中で終戦していない。中国は近隣のインド、ロシア、ベトナムなどと頻繁に紛争を起こしているし、ウイグルのような内戦は頻発している。また超大国アメリカは常に戦争している。多くの国が戦争を経験する中、日本は奇跡に近い形で戦争をしていない。

最近の若い人は、日本とアメリカが戦争していたことさえ知らない次世代の「戦争を知らない子供たち」が増えている。そういう次世代の子供の数は減少し続け、中小企業に若い人が来なくなってずいぶん経つが、最近は本当に来なくなっている。まず15歳から24歳の人口が2010年の1270万から2020年は1213万と57万人減っている。その若い人は次世代の「戦争を知らない子供たち」で、考え方も感じ方も随分と違う。そういう若者を大企業が採用し、残った人を中小企業が採用するわけだが、中小企業に来る若者はあまり残っていない。このことが結果として働き方の大変化をもたらす可能性は大きい。

それは国がこれまで推し進めてきた働き方改革の実現だ。つまり人口減少により人の価値が上がるからだ。企業は人なしには運営できない。コロナ過の時、日本では病棟を作っても働く医療従事者が確保できないと言っていた。一方フランスではロックダウンにより絶対必要なはずの看護師の多くが退職した。フランス人ははっきりしている。危ないのに給料は変わらないと退職する。そこで政府は給料を2~3倍に上げて募集したらしい。するとすぐ集まった。3か月ほど働いてお金を貯め、バカンスに使うらしい。日本は、基本として人の善意に依存している古いスタイルだ。仕事はよりハードに、危険はより増し、病院の経営状態からボーナスはカットされる。これでやめないのはすごいことだが、政府の無策を医療従事者が補っているというのではやはり限界がある。コロナ政策が180度変わったニューヨークでは地下鉄の運転手が足りないので、月給120万円で募集しているらしい。考えてみればサムスンなどは優秀な大学を出た学生には年収1000万円以上は当たり前だし、最近話題の小室さんも1800万円くらいだともいう。コロナに限らず膠着したこの国の給料体系も世界標準にならざるをえないと思うが、それを格差というのだろうか。

渕上コラム「変える言葉」