コラム

秘湯の旅


秋が深まってくると、深山の秘湯に浸かってイノシシ焼きながら鹿の刺身を食い日本酒で一杯というイメージが浮かぶ。こんなぜいたくな旅ができるのが日本の特徴だ。日本は本当に飲食が安い。先日テレビで渡辺直美さんがニューヨークで朝食に目玉焼き2個とベーコンそしてパンを友人と食べたら2人で7000円したという話をしていた。スイスではマグドナルドの標準単価は1500円と言われる。

ところで、今年新たに世界文化遺産として、ヨーロッパの7つの国にある11の町で構成されるグレイト・スパタウンが認定された。18世紀から20世紀にかけてのヨーロッパの国際的な温泉文化の証人ということらしい。実は日本では弥生時代の頃、ヨーロッパはローマ帝国の時代であった。当時は、テルマエと呼ばれた公衆浴場はローマ人の生活の一部となっていたし、ローマ帝国は領土の拡大と共にテルマエの文化も広げていったのだ。温泉はヨーロッパの文化でもあるのだ。現代のバスの起源は、今回の世界遺産にも認定されたイギリスのバース(bath)という町にあるらしい。

ヨーロッパの温泉と、日本の温泉は基本的に違うことがいくつかある。
(1) 日本は男女別で裸(一部、裸で混浴という地域もある)で、温泉にじっと浸かる。ヨーロッパは水着で混浴、かつ泳ぐ。
(2) 日本は温度が低いと加熱が標準だが、ヨーロッパはぬるくても自然のまま。
(3) ヨーロッパでは温泉入浴は医療行為というイメージで、健康保険が適用される国もある。

私もハンガリーで温泉に入ったことがあるが、やはり日本人のせいなのか、日本の秘湯の方に分があるような気がする。今後、日本の温泉地が世界遺産になるということがあるのだろうか?しかし、人が押し寄せても困る。風情がなくなる。日本の数ある秘湯の中で、お勧めは山形県の姥湯温泉だ。必ず期待以上のできごとに遭遇し、「ワーオー」と言ってしまう。地球の息吹と今なら絶景の紅葉をみることができる。

紅葉というと、赤い色をイメージするが、東北の白神山地やら、姥湯への途中のぶなの原生林など黄色の紅葉も捨てがたい。山が黄色一色になるのだ。姥湯にいく途中の山中には、峠の力餅の峠の茶屋という店がひっそりとある。不思議な店で、こんな場所になぜあるのか知りたかったが、時間がなくてパスした。個人的に、温泉の世界文化遺産入りを祝して、日本の秘湯へ入りに行きたい。クー!

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