コラム

協力する意味


「ホモサピエンス全史」という本を読んだ。ユヴァル・ノア・ハラリという名前のイスラエル人歴史学者が著者だ。全世界で500万部突破していて、実に刺激的な作品だ。

実は人類といっても過去16種ほど存在しており、今後も研究により増える可能性は大らしい。しかし、およそ700万年前にアフリカに誕生した人類で、今この地球に存在するのはホモサピエンス(ホモ属のサピエンス(賢い人という意味))ただ1種類だ。今後新しい種が生まれるのではという想定からXメンのような映画が作られている。

私たちのホモサピエンスは他の動物や他の種族に較べると筋力など弱かったが、一つの能力があった。それは大勢で柔軟に協力するということができることだ。アリやミツバチも大勢で一緒に働けるが、彼らのやり方は融通が利かず、近親者としかうまくやれない。オオカミやチンパンジーはアリよりもはるかに柔軟に力を合わせるが、少数のごく親密な個体とでないとダメだ.ところがサピエンスは無数の他人と柔軟な形で協力できる。この能力により、サピエンスは屈強なネアンデルタール人を絶滅に追いやり、世界を支配した.それによりアリは私達の残り物を食べ、チンパンジーは動物園や研究室に閉じ込められている。

それならばなぜホモサピエンスはなぜ他人と協力できるのか。それは7万年前から3万年前にかけて見られた「認知革命」といわれる新しい思考と意思疎通の方法の登場にあるといわれている。ただその原因はわからない。突然変異かもしれない。その新しいホモサピエンスの言語は他の動物や種族の言語と違い、恐ろしく柔軟で、周りの世界について情報を共有する手段として発達したという説がある。つまり私たちの言語は噂話のために発達したのだ。この説によるとホモサピエンスは本来、社会的な動物であるということになる。私たちにとって社会的な協力は、生存と繁殖の鍵を握っている。

個々の人間がライオンやバイソンの居場所を知っているだけでは十分ではない。集団の中で、誰が誰を憎んでいるか、誰が正直か、誰がずるをするかを知ることの方がはるかに重要なのだ。誰が信用できるかについての確かな情報があれば、小さな集団は大きな集団へと拡張でき、より緊密で精緻な種類の協力関係が築けるのだ。企業で考えて見ると企業は協力の場であることが大原則、協力をしない者は生き残ることができないのだ。皆が協力すればより大きな組織になれるのだ。この場合の共通の価値は「経営理念」しかないのだ。

渕上コラム「変える言葉」