コラム

締結式


先週M&Aの譲渡契約締結式を行った。売り主様に立派なホテルでしていただき、円満で将来性を感じる式であった。その理由はただ一つ、売り主も買主も人間的に対応したという事である。互いに信頼感をもてたのである。

今はコロナウィルスで未曾有の不況になりつつある。こういう状況下でこれからどういう形のM&Aが行われるかということについてバトンズの大山敬義社長が対談でこう述べている。「好況期のM&Aは、同業の買収によりさらなる増収を目指して、大きな融資を受けて大きく投資する。一方、不況期は資金も豊富に使えないし、今回の宿泊業のように一つの業種のみであるリスクに対し、他業種の買収をリスクヘッジとして行われることが多い。」そういう点でも、今回の売り主は通信業、買主は電気工事業で、互いに通信や電気の仕事をするときは外注で頼んでいる分が自前で出来るようになる。かつ通信はまだ成長の余地が残されているということで、好況期と不況期の両方のM&Aのやり方を持っていることになる。また売り主は60代後半、買主は40代と年齢的にもぴったりであった。優れた成果が期待される。

ある程度の場数を踏むと、売りにくい又は売れないタイプの企業が分かるようになる。まず売りにくいのは数字がわからない経営者を有する企業である。中小企業の決算書は、基本的に実態を表してはいない。例えば減価償却をしていない、在庫が正しくない、回収できない売掛金が載っている、資産の帳簿価格が全く違う(例えばゴルフ会員権、2000万円で載っていても、実際は50万円でしか売れない)など様々だが、すべて決算が税務中心で行われている。大企業のように税務の要件がどうであれ、取れないと判断されれば、すぐ貸し倒れ処理をし、価値が下がれば減損会計を行うという企業の内容を株主へきちっと報告しようという発想はない。純資産が3000万円あるので3000万円以上で売りたいと言っても、実は純資産は0だという場合もあり得る。ここでまず自社の企業評価ができないと買主とは大きな齟齬が生じる。

次に、お金を優先する経営者のいる企業、もちろん長い間の経営の結果としての企業の適正な幅の中の売却価格を主張することは当たり前で問題はない正当な行為だ。しかし、とにかくこの値段でないと売らないと言われると、ほぼ売れないケースが多い。仮に売れても、買った企業の経営は大変だろう。しかし、若いコンサルがお客様は神様で動いているケースも多いようだが、私には買った後の継続が一番である気がして、納得できない。

渕上コラム「変える言葉」