コラム

組織風土


オリンピック組織委員会の森会長の発言が問題になっている。森会長が厳しい批判を受けたが、よく考えてみると、森さん一人の問題ではなく、日本社会にはびこる社会風土のような気がする。以前地域の集まりに呼ばれて行ったことがある。「誰か意見はありませんか」というので意見を述べたら、次から呼ばれなくなった。「誰か意見はありませんか」という言葉は形だけ皆に尋ねたということで、意見を述べてはだめらしい。

ところで、フランスはコロナの感染者があまり減らないので苦労しているようだが、その中でまたバカンスがあるので、皆どこかに移動するので減らないのではという意見を聞いた。つまりフランス人というのは、自分の人生を楽しむことの方がコロナ対策より重要だと考える国民性をもっているということだ。フランス人にとり自由を奪われるのは人生を奪われると同じなのだ。

組織風土とは「組織において、共通に認識される価値観やルール」と言うことなのだが、風土と言われるだけあって長い間の共通の価値観であるため、これを変えるのは一筋縄ではいかない。今回のオリンピックの問題において、はからずも日本の多くの男性が持っている価値観と、若い世代や女性がもっている価値観の違いが浮き彫りにされた。これをチャンスとしてとらえていかないと、日本はずっと男女平等ではない唯一の先進国というレッテルをはられる事になる。

過去を振り返ると、明治維新では、1000年以上続いた武士の存在やまげというカルチャーも明治維新で一掃されている。喪服が白から黒になったのも明治だ。西洋の列国に追いつくために、若い明治政府の指導者が一気に変革してしまった。オリンピック憲章には「男女平等、環境問題」についても明確に表明されており、最近話題の国連で開かれた主要国によって決められたSDGs(持続可能な開発目標)でも、2030年までに達成すべき17の目標として、「ジェンダー平等の推進と女性の地位向上」という項目がある。つまりいまや女性の地位向上やジェンダーの平等というものは、世界の共通の価値観として認識されているのだ。

一方日本は、まだ夫婦別姓も実現できていないし、従来の高齢者中心の価値観からも脱却できていない。しかも高齢者の人口比率が高く、若い人の意見が受入れられない。ある意味この状況は悲劇だ。これを変えるには世代交代を待っていると手遅れになってしまう。世界の価値観に追いつくための強いリーダーシップが必要だ。

渕上コラム「変える言葉」